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サクラ大戦Ⅴ EP0荒野のサムライ娘 プレイレポート

サクラ大戦シリーズ。男女問わず多くのファンを持つシリーズである。昨年には15年ぶりのナンバリングタイトル、「新サクラ大戦」が発売されたのも記憶に新しいこのシリーズであるが、新サクラがそもそも15年ぶりなのは無論、サクラ大戦シリーズは一度15年前にシリーズが打ち切りになっているからである。それは、サクラ大戦Ⅴ、並びにサクラ大戦Ⅴの派生作品である、サクラ大戦Ⅴ EP0の失敗によるものというのが世間の認識だろう。サクラ大戦Ⅴは、たしかに売り上げなどのデータを見れば失敗という世間の評価も間違ってはいないと言えるだろう。だがゲームそのものの面白さでは、サクラ大戦Ⅴが他のシリーズに劣っているとは全く思っていない。筆者は紐育華撃団が立派に帝都、巴里華撃団と同じサクラワールドの一員であると考えている。最も、サクラ大戦Ⅴに関する一部批判が適当なことは否定しない。今回はそんな世論と実際の私体験とを比較しながら、サクラ大戦Ⅴの前日譚である、サクラ大戦Ⅴ・EP0 荒野のサムライ娘のプレイレポートを書いていこうと思う。

サクラ大戦Ⅴ・EP0 荒野のサムライ娘とは

この作品はサクラ大戦Ⅴのメインヒロイン、ジェミニ・サンライズサクラ大戦Ⅴ本編の前に、いかにして紐育に来るかというその道中を舞台に、様々な冒険を繰り広げるゲームである。まずは本作の魅力を部分ごとにピックアップして、お伝えしようと思う。

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本作のヒロイン、ジェミニ・サンライズと、愛馬のラリー。画像はPlayStation公式サイトより

この乗り心地は本作だけ。独特な「乗馬アクション」

本作ではシリーズ恒例の光武などのロボットに乗って戦うシュミレーションではなく、ジェミニが愛馬のラリーと荒野をスピーディーに駆け回るアクションゲームとなっている。この「愛馬と共に」が本作の賛否が分かれるところであり、戦闘中は常時、ラリーに乗りながらとなる。〇ルダの伝説で、エポナに常に乗ってる感覚と思っていただければわかりやすい。最も、緑の勇者の愛馬より断然小回りが効く上に、ラリー自身の戦闘力は低くなく、まさに人馬一体の戦いっぷりができるのだが、当然小回りは生身の人間より利きづらく、馬に乗って刀を振るう関係上、刀を持つ右手側への攻撃は得意だが、左側への攻撃が難しい、空中の行動の制限がとても多いなど、アクションとしてのとっつきやすさは低いだろう。中でも空中行動に関しては、最も本作の批判の的であり、ここに関しては賛成派の筆者でも擁護しようがない。なぜなら、本作は空中の敵の登場回数が多いからだ。空中の敵が多く登場するのに、空中行動の制限が強いのは、ストレスになるのも無理はないと言える。

昨今のゲームでは義務教育の如く備わる2段ジャンプは当然なく、ジャンプ中の移動は無し。最もこれはダッシュジャンプのみで、非ダッシュジャンプは移動が効く。とはいえそのために止まらなければならないのはアクションの爽快性を欠くことに繋がってるのは否めない。筆者はなんとか空中の敵を爽快に倒そうと、ドリフト急停止垂直ジャンプ移動切りという秘技を作らざるを得なかった。

しかしながらそれ以外のアクション面の出来はかなり良く、敵を蹴散らすドリフトやダッシュしながら敵をすれ違いざまに切り裂く爽快感は、昨今のゲームにも全く引けを取らないと思える出来である。中でも赤騎士というボスとの戦闘は、乗馬ならではのすれ違いざまの斬り合いができ、ワクワクするボス戦ができる。慣れさえすればだんだんとクセになる面白さがそこにはあるだろう。武器、ラリーにつける馬具などもバリエーションがあり、ポイントによるステータス振り、属性の概念もあったりと、プレイヤー側の自由度も、2004年のゲームであることも加味すれば十分なボリュームがある。

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過去作のキャラも隠しキャラで登場。現在では公式サイトにパスワードが載っており、クリア後ならばいつでも遊べる。大神一郎までもが乗馬で登場し「お前も乗るんかい」というファンのツッコミを集めたであろうことは想像に難くない

そんな表裏一体で独自性の強い乗馬アクションであるが、一度クリアさえすれば実は馬に乗らずに戦闘することもできなくはない。隠しキャラの大神、真宮寺さくら、エリカにはそれぞれ、自身の光武が用意されており、エリカはパスワードで、大神、さくらは、それぞれで一度クリアすれば、光武で戦うことができる、光武の操作性は極めて良く、新サクラ大戦の「霊子戦闘機」とは一味違った、よりロボットアクション感のある戦闘が味わえる。

ここからは筆者の見解だが、この独自のアクションは、良くも悪くも「時代に合わなかった」節もあるのではないかと思う。昨今では「死にゲー」と呼ばれる、操作に意図的に制限を設けてゲームの難易度を上げたゲームジャンルが流行を見せている。現在、言葉は悪いが「クソゲー」とは、判定がガバガバであったり、ストーリーが陳腐だといった、「作り手側の努力不足」を指すように思う。だが本作は、クリア後も何周も遊べる隠し要素、ストーリーに即したステージ及びステージギミック、クエスト中に発生するボーナスクエストなど、「作り手の努力」は十分認められる作品であるという所感である。先程お伝えした空中行動に関する不満も、当てるのが難しい故に、うまくジャンプ攻撃で相手を串刺しにできた時の爽快感がある。という見方も、現在ならばあるのではないだろうか。死にゲーのような操作性の制限が必ずしもマイナスではない現在において、「操作性」だけで本作をクソゲーと評するのは、いささか過小評価であるように感じた。

 

ジェミニと仲間、そして彼女らを巻き込むストーリー

サクラ大戦は1より以降、ストーリーの根幹は「町」であると筆者は考える。帝都・東京、そして花の巴里、摩天楼が空を貫く紐育が、いかにしてその姿になったのか、という歴史的な部分をプレイヤーに見せてくれる。大正時代のパラレルワールド太正を舞台に、大正時代の出来事も混ぜて、都市とそこに生きる人々をリアルに描き出すのがサクラワールドの魅力だろう。本作もその点は他のシリーズと同じく「アメリカ」という国を、リアリティを持ってプレイヤーに見せてくれる。最も、本作はジェミニアメリカを横断する話のため、ある特定の都市というよりは、アメリカという国全体に焦点が当たっている。

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ウェスタンなUIで少しずつ紐育に近づいて行くのがわかるワールドマップ

アメリカ、南北戦争をテーマに、かの有名なゲティスバーグの戦いや騎兵隊。さらにはアメリカらしくキリスト教にまつわる話に基づいた設定の数々がプレイヤーを引き込む。出てくる登場人物も、いかにも1920年ごろの人物の特徴を強調し、個性として際立っているキャラが多数登場する。例えばラスボスのパトリック・ハミルトンは、宗教改革を叫び、異端とされ火炙りの刑で殉教した実在の人物をモデルにしており、魔術によって南北戦争時代に蘇えったパトリックが、ノアの箱舟のように人類のリセットを目論むという設定となっている。アメリカ史に詳しい人なら、なるほどそこから持ってきたかとニヤリとできるだろう。特典の開発陣の挨拶内で、プロデューサーの広井王子氏は、「アメリカは大正時代の時点で摩天楼がすでに存在しながらも、ジャズなどの新たな文化が花開こうとする街で、そういう雰囲気を大切にしている」という旨のトークをされていた。その雰囲気は本作で存分味わうことができ、荒野を抜けたと思ったら、西部劇のような町を冒険したり、一転モダンな雰囲気の街をラリー共に駆け抜けることができる。(最も本作でアメリカ史からネタを掘り尽くした感があり、肝心のサクラ大戦Ⅴ本編では、都市に因んだストーリーが用意できなかったのか、紐育にまさかの織田信長が来るというなんとも言えないことになってしまった。)このようにストーリーのバックボーン、豪華な声優陣などによって、織りなされる物語は、プレイヤーを飽きさせないワクワクを提供しながら、往来作品のファンにはお約束の展開(いっつも結局発動しちゃう都市に眠る力など)も用意されており、非常に楽しめる作品であった。個人的には先に述べたパトリック演じる難波圭一氏の怪演は一見の価値ありだと思う。

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筆者は難波圭一氏といえばアクセル=ロウのイメージだったため、パトリックが難波氏であることを知った時は衝撃が走るほどの素晴らしい怪演だった。

主人公サイドのキャラクター達も魅力的で、元気で快活なだけでなく、強さを兼ね備えたヒロイン、ジェミニ・サンライズ(CV小林沙苗)はもちろん、不思議な少女フワニータ(CV大谷育江)のジェミニとの絆の物語。冒険の中で成長して行く様が印象的だった本作のヒーロー(?)のブレッド(CV岸裕二)、ジェミニと共に作品に活気を与えているチェンバー(CV坂東尚樹)と、それぞれが作品に影響を与える役割を持っており、ジェミニが主役ではあるものの、それぞれの物語も楽しめる。ストーリー内にはジェミニの例の心臓の秘密(ネタバレは各自で参照してほしい)も、言及こそされていないが多少関係しており、時折出るジェミニらしからぬ発言は、件の秘密を知るプレイヤーなら、「ここはジェミニではなく、、、、。」と分析しながら楽しめるだろう。

往来のサクラ大戦シリーズとは違い、恋愛要素が薄い本作では、「旅」という出来事を通じて、アメリカという国を眺めることができるだろう。

 

荒野をかけるサムライ娘

2つの大きな視点から本作の魅力を紹介してきたが、本作は世間で言われるほど駄作などではないことは分かっていただけただろうか。筆者が思うに、サクラ大戦ⅤはEP0と本編・さらば愛しき人よと合わせて一つの作品なのだと思う。往来シリーズのキャラごとのミニゲーム、あのミニゲームを一作品丸々アクションゲームとして完成させたのが、この「荒野のサムライ娘」なのではないだろうか。ここまで記事を読んでくれた皆様にも、フロンティアスピリッツ、青い空を心に写し、アメリカの広い荒野を暴れ馬ラリーと共に駆け抜けてみてほしい。